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借家権価格を控除法により算出【判例4】

東京地判平22・8・9(平21(ワ)46476)
立退料の相当性について

(1)そこで、Yが本件貸室からの退去を余儀なくされることに伴う不利益をカバーするだけの相当な立退料の金額について検討するに、鑑定結果によれば、まずは本件貸室からの移転に伴って生じる実損金額(動産類の移転費用、顧客らに対する移転通知(200通程度)の発送費用、本店所在地の登記登録費用)について、71万円と算出される。賃貸借契約

(2)また、鑑定結果では、いわゆる「借家権価格」として二通りの金額を提示しており、その一つは「補償法」という算定法式によるもので、不本意な立退きに伴って事実上喪失することによる不動産の経済的利益等、個別的に現れる借家権価格であって、鑑定人は109万円との算出結果を提示している。

この金額は、同一需給圏内の類似地域等において対象建物と類似性が高いと判断される成約賃貸事例から算出される新規正常支払賃料(16万2,000円)と現在の支払賃料(15万1,500円)との差額賃料(約1万1,000円)のほか、現行敷金と新規敷金との差額金についての利息金相当額、敷金の償却金額、その他の移転費用としての仲介手数料を加算したものであるが、鑑定人は、通常、前記差額賃料の補償期間は2年間にとどまるところを、特にXの希望によって立退きを迫られているという本件の事情に鑑みて、Yの本件貸室についての賃貸借期間と同じ6年間分の差額賃料として算出した金額である。

また、二つ目は、「控除法」という算定方式によるもので、建物に借家人がいる場合といない場合とでの当該建物やその敷地の価格の差額に着目し、そのうちの借家人に帰属する部分を借家権価格と評価するという考え方に基づき、鑑定人は522万円との算出結果を提示している。この金額は、本件貸室を、自用建物及びその敷地と想定した場合に算出されるその積算価格(2,900万円)と、貸家及びその敷地とした場合の収益価格(2,320万円)との差額金(580万円)が、賃貸人及び借家人の双方が潜在的利益として保有していると解した上で、これについても、Xの希望によって立退きを迫られているという本件の事情に鑑みて、衡平の見地から、借家人たるYに、前記差額金のうちの9割相当を帰属させるべきとの判断から、算出された金額である。

そして鑑定人は、かなりの格差の生じた借家権価格評価について、総合的に控除法による価格を重視して、借家権価格を500万円とする旨結論付けているものである。

(3)ところで、立退料相当額を決定する際に、流通市場が確立しているわけでもない借家権価格なるものを想定してその立退料を決定することには、強い異論も出されているところではあるが、有効に成立している賃貸借契約において、借家人の意思に反してその借家権を買い取るという意味での補償金額を算定することを考えると、当該借家について現に借家人が有していると考えられる利益を酌する一つの方法として、一定限度でその有用性も認められると解される。

特に本件では、前示のとおり、正当事由を具備したというためには、Xにおいて、Yに生ずべき様々な損失や不利益を、全面的に補填することが必要と認められるところ、鑑定人が、差額賃料等を基礎として算出した借家権価格109万円は、意にそわない移転を余儀なくされるYにとっては、移転先において当面必要となり得る賃料の増加に伴って生ずる損失分であるから、Xにおいて一定期間はその補填を行うべきと解されるし、その補填期間が差額賃料6年分というのは、いささか期間が長すぎるきらいはあるけれども、本件の事情に鑑みれば相当といえる。また、たとえばYが主張する本件貸室で事業を営むことに伴って生ずるステータスというものは、本件貸室の積算価格(建物、敷地の評価額)の一部として読み込むことも可能であろう。

その場合でも、自用建物及びその敷地としての積算価格と貸家及びその敷地としての収益価格との差額金の、9割の金額を借家人であるYに帰属させるべき利益と評価することは、いかにも過大に過ぎると考え得るが、前示のとおり最終的な調整額が、差額賃料の補填分109万円を含めて、500万円という金額で評価するのであれば、全体としてのYの損失額をカバーするものとして、ふさわしいと考えられる。

とすれば、最終的に、移転に伴う実損71万円に、前記借家権価格に相当するとされる500万円を加算した571万円は、Xの正当事由を補完するための立退料として、相当であると認められる。

 

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