不動産鑑定士が解説

同族会社間の不動産売買や同族会社と同代表間の不動産売買は、不動産の価格を恣意的に決めて取引できるので、その取引価格が妥当なものであることを税務署や役員会等に説明できるように説明書類を準備しておく必要があります。

なぜなら不動産の売買は自由に売買価格を決められるからといって、同族会社間、同族会社と同代表間の不動産の売買価格を低く設定してもいいと言うわけではないからです。

不動産の売買は税法では、「時価」を基準として課税関係が成立していますので、価格を時価より低くして取引をすれば税務上問題になる可能性があるので注意喚起をしています。

同族会社間の不動産売買とは

同族法人間の不動産売買は、価格に注意して取引する必要がありますが、同族会社とはどういうものでしょうか?

同族会社とは、経営者一族が会社の出資持分の全部またはほとんどを所有している会社のことを言います。

即ち、会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社を言います。

上記の「特殊な関係にある個人や法人」とは、以下の通りです。

特殊な関係にある個人や法人
1.株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)

2.株主等と事実上の婚姻関係にある者

3.株主等の使用人

4.株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を立てている者

5.株主等並びに株主等と特殊関係のある個人及び法人で他の会社を支配している場合の当該他の会社。 なお、支配しているとは、発行済株式又は出資の50%超を所有している他の会社をいいます。

同族会社と同族会社役員間の不動産売買税法では時価を基準として課税関係が成立しますので、価格を時価より低い価格で取引すれば税務上問題になる可能性があります。

◆なぜ、同族法人間の不動産売買及び同族法人と同役員間の不動産売買は注意が必要なのか?

同族法人間の不動産売買及び同族法人と同役員間の不動産の売買価額は、税法上すべて時価を基本に課税関係が出来上がっているので、その地域の相場に相当する金額で取引するのであれば、税務上問題を生じることはありません。

しかしそれよりも低い価額で取引が行われてた場合には、税務上問題になることがあります。

又、売買価格において適正な価額よりも著しく低い価額での売買を行った場合には、取引に合理性が認められないとされる場合があります。

さらに役員が会社へ時価の1/2未満で売買を行えば、時価で譲渡したものとみなされ、所得税が課税されます。

同族会社は時価との差額が受贈益として法人税が課税されるので注意が必要です。

では、時価とは何でしょうか?

所得税法・法人税法では土地の売買については「その時における価額」としか記されておりません。よって、所得税法・法人税法上の時価は財産評価基本通達による価格ではないということが分かります。

したがって所得税法や法人税法上で不動産の時価について問題になった折には、不動産鑑定評価書による価額が適正な価額の証明の役割を果たすと考えます。

又、相続税法では財産評価基本通達より求めた価額が時価と考えられますが、財産評価基本通達が全国一律画一的な評価のため実際の取引価額と差が生じるリスクがあります。

それ以外の時価としては下記のものがあります。

不動産鑑定評価額

公示価格・基準地価額

固定資産税評価額

路線価

取引事例(実際の売買事例)

 
税務署からのチェックが入りやすい

同族会社間、同族会社と同社の代表間の不動産売買は税務署からのチェックが入りやすいと言われています。

それは、同族会社間、同族会社と同社の代表間の不動産売買の価格を自由に決められる状況にあるからです。

即ち、同族会社間、同族会社と同族代表間とう関係者間なので恣意的な価額、つまり通常よりも低い価額・又は通常よりも高い価額での売買が成立し、租税回避になってしまう可能性があるからです。

税法においては「時価」を基本として課税が成立していますので、不動産取引において不動産の時価は、相場である取引価額に相当する金額で取引していれば税務上問題になることはありません。

しかし、同族会社間、同族会社と同社の代表間の不動産売買は意図的に売買価格を低くしたり、高くしたりしがちなので、税務署から「安すぎる、高すぎる」と指摘を受けやすいので注意が必要です。

 

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◆時価鑑定をしなかった場合に考えられること

同族会社間、同族会社と同社の代表間の不動産売買において、取引価格を売主買主の意向のみで価格を決め、時価鑑定をしなかった場合、どのようなことが考えられるでしょうか?

税務署が入った場合

 

 

税務署から不動産の売買価格が低すぎるのではないですかとか、高すぎるのではないですかという問いかけがあった場合には、その取引価格の妥当性の説明責任は同族会社及び同社の代表となります。

価格の妥当性を説明できず、税務署が取引価格に納得しなければ、時価との差額について当事者に課税される場合があります。詳細は売主側・買主側(法人税・所得税)を参照ください。

債権者等の第三者への説明

 

 

同族会社の社員から取引価格が低すぎたとか、高すぎたという意見が出て、後々の争いの原因となることも少なくありません。社内にも説得力のある説明資料を作製しておく事が大切かと思います。

売主側・買主側(法人税・所得税)

税法においては、不動産の時価を基本として課税が成立しています。

安く不動産を売却

 

 
 売主:不動産を時価で売却したものとみなされて、時価との差額は寄付金として一部が損金不算入となり、法人税が課税されるおそれがあります。
 
買主:不動産を時価で購入したものとみなされて、時価との差額が受贈益として法人税が課税されます。
 

不動産を高く売却

 
売主:時価で売却されたものとみなされて、時価との差額が寄付金扱いとされます
 
買主:時価との差額が受贈益として所得計上することが求められます。                
 

同族会社から同社役員へ

 
売主:会社は、不動産を時価で売却したものとみなされ課税されます。
 
買主:役員は、時価との差額は会社からの役員給与とみなされます。なお、役員給与とされた金額については、会社側で所得税の源泉徴収が必要となります。
 

同社役員へ高く不動産を売却

 

 
売主:会社は高く不動産を売却したら、益金となり、法人税がかかります。時価と取得価額との差額が売却益金となり、時価を超える部分は受贈益となります。
 
買主:役員は、時価で不動産を取得し、時価を超える部分は法人への贈与(寄付)となります。   
 

役員から会社へ安く売却

 
売主:役員が、時価よりも低額で売却した場合、その売買価額が1/2に満たない低額の場合には、時価で売買があったものとみなされます。
 
買主:会社は不動産を時価で購入したものとみなされ、税務上はその不動産の時価が資産計上されます。時価と購入金額との差額が受贈益として法人税の計算上益金算入されて課税されます。
役員から会社へ高く売却
 
売主:役員は、売却代金と不動産時価との差額が、同族会社から受けた役員給与として課税されます。
 
買主:同族会社は同社役員から時価で不動産を購入したものとして法人税の課税をされます。その不動産の時価が取得価額となり、購入した不動産の価額の時価を超える部分の金額は、同社役員への役員給与とみなされます。
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◆リスク回避には不動産鑑定を利用しましょう

不動産鑑定士による不動産鑑定評価書は、不動産鑑定評価基準等に基づき求められた鑑定評価額即ち、適正な時価が記載されています。

不動産の売買等に不動産鑑定を活用しない場合には、下記のようなリスクがあります。

税務署等に取引価格が否認されるリスク

不動産の売買等に先立ち、不動産鑑定により適正時価を把握し、その金額で取引を行えば、税務署からの否認リスクは回避可能です。不動産鑑定により求めた価格の正当性を主張すべきです。

 
不平不満が生じ、争いになるリスク

会社の関係者、又、所有者の親類等から不動産を安く売却したのではないか、又は高く不動産を購入したのではないかという不平・不満が生じ、争いが生じるリスクがあります。かかるリスクを回避するためにも適正な時価を不動産鑑定により求めて、争いになるリスクを回避しましょう。

 
事業承継に対するリスク

会社所有の不動産を安く見積もって事業承継したために、関係者から会社を安く叩き売ったとか、会社を思いのほか、高く引き継いでしまったことに対する不平不満が事業承継が行われた後にも生じるリスクがあります。そのようなことの起こらないように会社所有の不動産は全て鑑定評価により適正な時価を把握し、それに基づき事業承継を行えば、このようなリスクは生じる心配はなくなります。

 
不動産鑑定書の活用の仕方・その効力

法人が絡む不動産の売買等は、税法では全て時価を基本として、課税関係が出来上がっていますので、同族法人間、同族法人と同代表間の不動産売買等は適正な時価で取引すべきかと思います。

適正な時価を把握するには、不動産鑑定書を活用することをお勧めします。不動産鑑定士による不動産鑑定書は価格の妥当性を説明する証明能力有し、以下のような活用の仕方があります。

税務署等への価格の説明資料として 

不動産の売買等の価格の説明・根拠資料として

担保評価のための資料として

訴訟における説明資料として

会社合併(M&A)に伴う説明資料として

事業承継に伴う不動産の価格の説明・根拠資料として

法人の株価算定のための基礎資料として

現物出資のための基礎資料として

地代・家賃の交渉・訴訟のための説明資料として

固定資産(不動産)の交換のための基礎資料として

課税上の不服申し立てや訴訟の基礎資料として

会社分割のための説明資料として

賃貸等不動産の時価等の開示のための資料として

減損会計にかかる資料として

 

適正な不動産の時価であることを証明する手段として、例え費用が発生したとしても、不動産鑑定評価書を活用する事で、安心して不動産の取引が可能です。不動産鑑定評価書を十分に活用されることをお勧めします。

同族会社間、同族会社と同法人代表間の不動産売買はアプレイザル総研で不動産鑑定を!!

法人が、法人所有の不動産を譲渡する等の場合は、不動産の価額は適正な時価で動かす必要があります。

国家資格である不動産鑑定士が在籍する株式会社アプレイザル総研は、同族会社間、同族会社と同法人代表者間の不動産鑑定のご依頼を多数お受けしている実績があります。

取引する不動産の価格が適正な価格である事を説明するにあたり、不動産鑑定は、不動産の価格が適正な時価を表わしていることを説明する資料としてお役に立ちます。

 
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