贈与財産である宅地について、借地権の存する土地として評価が相当とした事例  (平成26年5月9日裁決)

1.事案の概要

・本事案は、贈与により取得した土地について、当該土地には借地権があるため、自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価すべきであるとの請求人の主張を認め、処分の一部を取り消したものである。

2.本件土地の概要

借地権の評価の事例

イ.本件土地:地積275.63㎡。本件土地は道路に接していない土地である。平成21年8月21日母Gより贈与により取得、Gは本件土地を故H(請求人の父、亡父)から相続により取得。

ロ.J社は亡父が設立した会社で、現代表者は請求人である。

ハ.本件土地とe線の間に、本件前面道路(地積780.43㎡、母Gが亡父から相続により取得した土地)及び本件旧公有地(地積172㎡、f市が所有していた公有地でJ社が取得した土地)がある。

なお、本件土地と本件前面土地は、平成21年1月7日にJ社が本件旧公有地を取得したことにより、公有地ではなくJ社が所有する本件旧公有地により分断されることになった。

ニ.J社は、昭和52年8月18日本件土地本件前面土地及び本件旧公有地上に本件建物を建築したが、平成10年7月に本件建物は取り壊された。なお本件建物は鉄骨造平屋建1783.33㎡の駐車場である。

ホ.J社は本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地に昭和59年6月25日に本件共同住宅(延598.61㎡、SRC6階建)を、平成5年8月22日に本件ホテル兼店舗(2879.76㎡、SRC10階建)を建築した。

ヘ.J社と亡父又は母Gとの間において、本件土地及び本件前土地に係る賃貸借規約書はいずれも作成されていないが、J社は本件土地及び本件前面土地の地代は、遅くとも昭和63年から本件贈与まで、亡父死亡前は亡父に、亡父死亡後は母Gに対し支払っていた

3.争点

本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきか否か。

4.原処分庁の主張

 本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきではない。

イ 借地法上の借地権について

本件建物は、借地法第2条第1項に規定する非堅固な建物で借地権の存続期間は30年であることからすれば、本件贈与時は建築から32年経過しており、借地権は消滅している

また、上記によらないとしても本件建物の滅失後、本件贈与時まで、建物は建築されず、再築ないし改築の具体的計画も一切確認できないこと及び本件土地の前所有者が母Gで請求人がJ社の代表者であることを踏まえると、借地権の設定において、請求人の意のままに母Gを通じて本件土地の賃貸借契約の内容を容易に変更することができたことから、本件贈与時に本件土地には、借地法第1条に規定する建物の所有を目的とする利用権はない

ロ 使用状況等について

本件贈与時の本件土地(本件a土地及び本件b土地を除く。)の使用状況等からしても、本件贈与時に本件土地には、借地権は存しない

5.請求人の主張

本件土地の価額は、借地権の価額を控除して評価すべきである

イ 借地法上の借地権について

借地法第2条第1項は、建物が朽廃した場合を除き、借地上の建物が取壊しなどにより滅失しても借地権は消滅しないと解されている。

J社が、亡父から賃借した本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を敷地として昭和52年8月18日に建築した本件建物は、借地法第2条第1項に規定する堅固な建物に該当し、同項によると借地権の存続期間は60年となり、本件建物が取壊しにより滅失した以降においても、借地権の終了及び合意による契約解除の事実はないことからすれば、本件贈与時に本件土地には、借地権はある。

ロ 使用状況等について

借地権の及ぶ範囲は、建築面積(庇を含む。)のみに限定されるものではなく、契約内容、土地の使用制限等の事実関係に基づき判定されることから、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地などの使用状況等が次のとおりであることから、本件贈与時に本件土地には、借地権は存する。

(イ) J社は、本件前面土地及び本件旧公有地の上に、J社ビル等を建築した。

(ロ) 本件土地は、平成14年の本件ホテルの増設工事建築確認申請上、J社ビル等の容積率の計算に入っていること、また、本件贈与時のJ社ビル等の容積率の計算に必要な土地の面積は、本件前面土地の面積を超えていることから、本件土地はJ社ビル等の容積率の計算上、必要な土地である。

6.審判所の判断

イ 法令解釈等

(イ) 借地権とは、建物の所有を目的とした地上権又は賃借権をいい、賃貸借とは賃貸人と賃借人との意思の合致により成立する

(ロ)借地借家法施行後もその効力を有することになる借地法第2条は、借地権存続期間満了前に借地権が消滅するのは、建物が朽廃したときだけで、この場合の朽廃というのは、建物が自然に腐蝕して、建物としての使用に耐えなくなった状態になることで朽廃したかどうかは、建物の全体を観察して決めなければならず、建物を構成する各部分の材料が腐っても、建物として使用できる状態であれば、まだ朽廃したとはいえないとされている。そして朽廃と滅失とは区分され、建物が滅失しても借地権は消滅せず、この場合の滅失というのは、人工的滅失(建物取壊し)、自然的滅失を問わず、滅失して建物としての存在がなくなることをさしていると解されている。

また、建物が滅失した後、借地権者が行う新建物の再築は借地権が存続している間になされればよく、滅失から再築までの時間的間隔に制限はないとされている

ロ 認定事実

(イ) J社は、昭和52年8月18日、本件土地、本件前面土地及び本件旧公有地を敷地として本件建物を建築していることからすると、同時期には、亡父とJ社の間において、建物所有を目的として本件土地を貸借することについての合意が存在していた。

(ロ) 請求人が当審判所に提出した平成25年7月8日付の母G作成の書面によると、本件土地の相続時(平成11年6月○日)から本件贈与時(平成21年8月21日)までの間において、J社が本件土地の使用を継続することについて、当時の本件土地の所有者であった母GはJ社に対して、何ら異議を述べておらず、一方、借主であるJ社は、その間、地代を支払った上で本件土地を継続して使用していた。したがって、本件土地の相続時から本件贈与時までの間、J社による本件土地に係る建物所有を目的とする貸借権は存続していた。

ハ 当てはめ

(イ) 本件建物は、昭和52年8月18日に本件土地上に建築されたものの、その当時の本件土地に係る地代支払の事実が確認できないため、本件土地の貸借関係が賃貸借であったのかあるいは使用貸借であったのかは不明であるが、本件土地に借地権が発生したのは、早ければ昭和52年8月18日である。

そして、昭和52年8月18日には、亡父とJ社の間では本件土地に係る本件建物の所有を目的として貸借する旨の合意が存在していたことが認められ、J社は、本件土地の地代を遅くとも昭和63年から本件贈与時まで、亡父又は母Gに支払っていたことを併せて考慮すると、J社と亡父との間には、遅くとも地代の支払が認められる昭和63年までに、本件土地に係る本件建物の所有を目的とする賃貸借契約が成立していたと認められる。

したがって、昭和63年以降、J社は当該契約に基づく本件土地に係る借地権(以下「本件借地権」という。)を有していたと認められる

(ロ)建物が借地権存続期間満了前に朽廃したときは、借地権はこれにより消滅するが、 建物が滅失しても借地権は消滅しないとされているところ、上記のとおり、本件建物は、本件駐車場設備内の事故を原因として取り壊されたものであり朽廃を原因として滅失したものではないから、平成10年7月に本件建物が滅失したことは、その時点での本件借地権の存続には影響しない。

(ハ) 上記のとおり、J社は本件建物が滅失した後も、本件土地の使用を継続していること、継続して地代を支払っていること及び上記のとおり、J社は建物を再築すべくN社に本件土地の利用計画の策定を依頼していることからすれば、J社としては、本件建物の滅失後も本件借地権を返還することなく、本件土地を引き続き使用及び収益することを予定していたと認められる。

(ニ) ところで、建物が堅固か非堅固かにより借地権の存続期間は異なるところ、本件建物が既に滅失していることから、それがいずれであったのかは、不明というほかない。そこで、本件建物が堅固な建物に該当していた場合又は非堅固な建物に該当していた場合のそれぞれについて、本件借地権についての存続期間に関する当事者の約定がないことを前提に、借地法第2条第1項及び第6条第1項に基づいて以下検討する。

A 本件建物が堅固な建物に該当していた場合は、本件借地権の存続期間は60年となることから、本件建物が建築された昭和52年8月18日に本件借地権が発生したとしても、本件贈与時である平成21年8月21日は本件借地権の存続期間満了前であること、上記のとおりJ社は本件借地権を返還していないことから、本件贈与時に本件借地権は消滅していない

B 本件建物が非堅固な建物に該当していた場合は、本件借地権の存続期間は30年となるから、仮に、昭和63年に本件借地権が発生したとすれば、同時点から本件贈与時までの期間は30年に満たないこと、上記のとおりJ社は本件借地権を返還していないことから、本件贈与時に本件借地権は消滅していない。しかしながら、仮に、昭和52年8月18日に本件借地権が発生していたとすれば、同日から30年を経過した平成19年8月18日には本件借地権は、一旦消滅していたことになるが、上記のとおりJ社は本件借地権を返還していないこと、上記のとおり、J社は本件建物が取り壊された後も現在に至るまで継続して使用しており、また、上記のとおり、本件建物が非堅固の建物であった場合の借地権の存続期間の満了日である平成19年8月18日当時、本件土地の所有者であった母Gが借主であるJ社に対して、何ら異議を述べていないことが認められることからすれば、仮に、平成19年8月18日(本件贈与時前)に本件借地権が一旦消滅したとしても、その時点において、J社と母Gにおいて借地法第6条に規定する法定更新がなされ、前契約と同一の条件で更に借地権を設定したと認められる。

C そして、本件借地権が、その発生時から本件贈与時までの間に消滅したとするその他の事由も認められないことからすれば、本件建物が堅固な建物か否か、また、その発生の日が昭和52年8月18日であったのか、あるいは昭和63年であったのかにかかわらず、本件贈与時には本件借地権が存在した。

(ホ) 以上のとおり、本件贈与時に本件土地上には、J社の借地権が存在することは明らかであるから、評価基本通達25の定めに従い、本件土地の価額は自用地としての価額から借地権の価額を控除して評価するのが相当である

ニ 原処分庁の主張について

 原処分庁は、上記の「原処分庁」欄のとおり、本件土地に対する借地権は本件贈与時には消滅していること及び本件土地は課税時期には更地であったことなどを理由として、本件土地にはJ社の借地権がないものとして評価すべきである旨主張するが、上記のとおり、早ければ昭和52年8月18日、遅くとも昭和63年に発生した本件借地権が、本件贈与時まで存続しており、また、賃貸人である亡父又は母Gと賃借人であるJ社の間で、本件土地に係る賃貸借契約の内容が変更された事実も認められないから、本件贈与時に本件土地上にJ社の借地権が存在することは明らかである。したがって、原処分庁の主張には理由がない。

5 本件更正処分等について

(1) 本件土地の価額について

 本件においては、本件土地の価額を評価通達等に基づき評価するのが相当であるところ、原処分庁は、本件土地のうち本件a土地及び本件b土地についてのみ借地権があることを前提として、別表のとおり、本件土地を3画地に区分して評価しているが、上記のとおり、本件土地の全体に借地権が存在するから、本件土地の価額は、1画地として評価するのが相当である。

 そうすると、評価通達等に基づく本件土地の価額は別表の3のとおりとなる。以上

 

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