底地とは
底地は借地権が付着した土地を言います。したがって土地の所有者である地主は、自ら直接使用収益ができないので様々な制約があります。
まず、借地権とは、建物を建てるために地代を支払って他人から土地を借りる権利を借地権と言います。
細かくなりますが、不動産登記規則第111条で「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」と定義しています。
したがって底地は建物がその敷地に存在しなければ底地と言いません。また駐車場であったり、資材置き場等は建物が存在しないので底地には該当しません。
底地は一般的に地代は安定していますがその水準は低く更地のように換金性は高くはありません。
なおかつ底地は相続税の課税対象になります。相続税は現金納付が原則で物納するには、それなりの要件が厳しく下準備が必要です。又、借地権者とのトラブルは絶えずあるため地主にとっては大きな重荷になる可能性があります。
しかしながら、何と言っても先祖から引き継いだ土地ですのでこれらの問題を解消していく方法はありますのでその方法を考えていきたいと思います。
◆底地と借地権の関係性
借地人は建物の所有を目的とする土地を借りる権利すなわち「借地権」という権利を持っています。地主は底地という借地権の付着した土地の権利を持っています。
底地と借地権の関係は表裏一体の関係で、どちらか一方の権利が強くなれば一方が弱くなる、又、どちらか一方の価額が上がれば、他方の価額は下がるという関係になっています。
又、更地の価額=借地権価額+底地の価額の関係が成り立ちます。
しかし借地権の価額と底地の価額の両方が単独の場合には、上記の式は成り立ちません。すなわち、借地権価額+底地の価額≠更地の価額となります。
一般的に商業地域など容積率の高い土地の利用効率の高い地域では借地権の価額は高く、底地価額は低くなる傾向があり、両権利を単独で売りに出せば、低くなる傾向があります。
また、底地のみの場合は特に単独で売りに出せば、価額は低くなっていく傾向があります。
底地と借地権は表裏一体か?
国税庁が定めている相続税の路線価図に設定されている借地権及び底地の割合は借地権の割合+底地の割合=1になるように定めています。
しかし、相続税以外の一般の不動産の取引においては上記のように両者は単独で取引する場合には、借地権の価格+底地の価格=更地の価格にならないので注意が必要です。したがってこの場合は底地と借地権は表裏一体ではありません。
ところが、借地権と底地が一体となる時及び相続税法での評価の時は、表裏一体になります。
◆底地は大きく分けて5種類
平成4年8月1日に施行された新借地借家法及び旧借地法に基づき、借地権は下記の5種類になります。したがって底地も5種類の借地権の付着した土地に対応して5種類になります。
②普通借地権(借地借家法第3条)
③定期借地権(借地借家法第22条)
④事業用定期借地権(借地借家法第23条)
⑤建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
なお、借地権を評価する場合、①を借地権(以下、借地権という)、②を普通借地権(以下、普通借地権という)、③~⑤を定期借地権等(以下定期借地権等という)に区分しています。
借地権(旧借地法)
旧借地法に基づく借地権は現在もまだ数多く存在しています。旧借地法は、大正10年(1921年)に建物の所有を目的とした土地の契約等を定めた法律です。
旧借地法において、土地の契約期間等が定められていますが、更新が可能です。場合によっては、半永久的に借地ができる可能性があります。又、借地権の売買も可能です。
地主が更新を拒否するには正当事由が必要となります。
普通借地権
新借地借家法による普通借地権は、旧法の借地権の内容をほぼ引き継いだ借地権です。新法では、普通借地権は、建物の非堅固・堅固に関わらず、その存続期間は30年です。
更新する場合は、1回目の更新は20年、以降の更新は10年となっています。
なお、契約は更新されることが原則です。地主である底地の所有者(底地権者)が更新を拒絶する場合には正当事由が必要です。
借地人が、契約期間満期後も土地を使用し続けている場合、地主が異議を申し出なければ、契約が更新されるので注意が必要です。
一般定期借地権
一般定期借地権とは、建物譲渡特約付借地権または事業用定期借地権以外の定期借地権をいいます。
一般定期借地権は、契約期間を50年以上と定める借地契約で、建物の建替えによる期間延長をしない、建物買取請求権を原則認めないと定め、契約期間満了後、地主は確実に土地を取り戻すことができる内容になっています。
この契約書は、公正証書等による書面によることとなっており、事業用以外の用途に用いられることから、マンションや老人ホームなど特定の人の居住用建物の借地として利用されています。
事業用定期借地権
事業用定期借地権とは、事業の用に供する建物の所有を目的とした定期借地権を言います。契約期間は、10年以上50年未満です。
10年以上30年未満の事業用借地権の場合は、以下の3つを定める必要があります。
②建替えによる期間延長
③建物買い取り請求権がないことを定める
この契約書は、期間満了により終了し、原則として土地を更地にして地主に返還することとなります。
又、30年以上50年未満の事業用借地権の場合は、上記の10年以上30年未満の事業用用借地権の契約と異なり、①契約の更新、②建替えによる期間延長、③建物買い取り請求権がないことを定めることは任意であり、当事者の話し合いに基づくことができます。
なお50年以上の契約を結ぶとなると、事業用であっても一般定期借地権を利用することになります。
又、この契約書は、公正証書による書面によることになります。公正証書によらない契約は無効となりますので、注意が必要です。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権とは、土地の利用目的の制限はありませんが、借地期間を30年以上と定めた借地契約で、借地契約期間が終了(満了)になった場合に、地主(貸主・借地権設定者)に借地上の建物を相当の対価で譲渡する旨定めた特約付の契約を言います。
地主が借地上の建物を買い取れば借地権は終了します。地主には正当事由は不要ですが、あまり利用されていないようです。
底地売買における注意点は?
底地売買における注意点は、底地を購入したいという人が極めて少ないということです。
底地とは借地権の付着した宅地で、一応所有権です。しかし、底地は地主自らが使用できず、一般的に換金性の乏しい土地で、地代(賃料)は安定しているものの固定的で収益改善が難しく、担保力が低いという底地のもつデメリットが関係しているからです。
又、借地人との間にトラブルがある土地ならば、なおさら底地を購入したい人は少なくなっていきます。
底地は先祖伝来の土地が多く、他人に土地を手放す前に底地を個人から同族会社へ移し、相続対策・所得分散等を考えるのも一つの方法です。
底地を売却するのであれば、まずは借地人に声をかけるべきかと思います。なぜなら、第三者に売却するよりも高い価格になる可能性があるからです。
②借地上の建物の使用状況を把握しておくこと
③無断で増改築・建て替えが行われていないかをチェックしておくこと
④未払い地代がないかチェックしておくこと
⑤事前の測量
売却しやすくするためには以上の点が重要かと思います。
なお底地は、地主の所有なので事前の測量をするにあたり、借地人にお声を掛けずに行えますが、借地人の承諾をとってトラブルの未然の防止をすることが大事な注意点と言えます。
◆底地の売却
底地は借地人に建物の所有を目的に貸し付けられている土地なので、借地借家法や旧借地法に守られた借地人が存在し、購入しても土地を自由に使えず、強いて欲しがる人は少なく、市場価値は限定的です。
そのため底地を単独で売却しようとしても難航します。
そのような状況なので底地の売却先は同族法人、借地人、第三者となります。
底地の売却方法は下記のようになります。
借地人に売却する…まずはお声がけしてみる
不動産業者に売却する…相見積をとり、一番高い業者に売却する
底地と借地権を同時に売却する
第三者に売却する
底地と借地権を交換した後に各々の土地(完全所有権となった土地)を各々が売却する
借地人への売却
底地の売却にあたり、まずは借地人へ売却の打診をしてみましょう。
借地人が底地を購入すれば、土地・建物の所有者が同一人となりますので、借地人は地代の支払いが不要になり、なおかつ、融資を受ける場合には担保価値も上がりますので、借地人にとってメリットがあります。
借地人へ売却すれば、売却価格も第三者へ売却するより高い価額が期待できます。
借地人への売却を考える場合、売却の話をするタイミングが大事です。例えば、借地人に相続が発生したり、又、地主側に相続が発生した時とか、借地人から建て替えや増改築の相談をして来られた時がいいタイミングと言えます。
底地と借地権をセットで売却
底地と借地権を共同して売却する場合です。底地や借地権は各々単独では売却しにくい不動産であり、又、それぞれを単独で売却するとなると価値が下がってしまいます。
しかし、底地と借地権を共同して第三者に売却する方法は、底地や借地権が各々持つデメリットが消えてしまいます。底地と借地権を同時に購入した第三者は完全所有権となる土地を取得することになるため、その不動産を自由に使用することができますので、利用価値が高まり、なおかつ、担保価値も高まります。
なお、底地と借地権の価格の配分については事前に当事者打ち合わせが必要です。
第三者への売却
底地とは借地権の付着した土地であるため、第三者が底地を購入してもその土地を自由に使えませんし、又、借地人は借地借家法により保護されているため、特別な事情がない限り、土地の賃貸借契約を解除することはできません。
さらに地代収入が低ければ、第三者への売却は時間がかかる可能性があります。
地代が固定資産税等の納税額より高く、立地や将来展望に可能性が見込まれる物件であれば、第三者への売却は可能性があるかもしれません。
不動産会社への売却
底地を不動産会社へ売却する場合というのは、端的に言って底地を売却しなければならない理由と売却期限等が考えられます。
例えば相続が発生し、相続税の納期までに納税資金を確保しなければならないとか、底地の数が多く、借地人とのトラブルや地代の値上げ、又は値下げの交渉が煩わしくなった等の理由で底地の換金化を急ぎ、底地を不動産業者へ売却するケースです。
このような場合の底地の価格は借地人へ売却する場合に比べて低くなる傾向があります。
何故なら、不動産業者は底地を借地人へ売却または借地権をも取得し、更地化して転売を予定している可能性があるからです。でも不動産業者への売却で相続税の納税資金の確保や借地のトラブルからの回避は可能となります。
◆底地の買取
底地のみの単独売却は、底地の持つ特性ゆえ、一般の不動産に比べて時間がかかるものですが、その時間を待てず、底地を買い取り業者にゆだねるとなると底地の換金化(底地の売却)は、早まりはしますが、価額の面では借地人に売却する場合に比べて相当安くなります。
では、底地を不動産業者に買取してもらう場合とはどんな場合でしょうか?
地代の値上げ交渉をしているが、借地人と揉めている
相続税の納税資金のため物納も難しく納税期限までに現金化したい
高齢なので事前に相続対策として、今ある底地を整理しておきたい
なお、底地を買い取り業者に買い取ってもらう場合には、買取業者は底地を取得後、その底地を借地人等に転売しますので、エンドユーザーが購入する場合に比べて、底地の買取価格は低くなる傾向があります。
売買価格が適正か確認
底地は、一般的に取引されている更地の価格とは異なり、流通性が乏しく、どなたが買主になるかによって、売買価格に違いが生じる特性があります。
底地を借地人に売却するか、第三者に売却するか、買取業者に売却するかによって売買価格は異なります。
又、底地は設定されている借地権の種類によって権利の制約の程度が異なり、その制約の程度が底地の価格に反映されます。底地の価格は以下の通りです。
②普通借地権が設定されている底地
③定期借地権が設定されている底地
④事業用定期借地権が設定されている底地
⑤建物譲渡特約付借地権が設定されている底地
底地の売買価格が適正か否かについては、売主又は買主側の不動産鑑定士又は宅地建物取引士とよく相談の上、価格が適正か否かを確認すべきかと思います。
どのような状況におかれている底地が買主の立場によって底地の制約がなくなるか否かがキーポイントになりますので、その点をよく検討し、底地の価格の妥当性を検証すべきかと思います。
売買にあたり、測量で取引面積と境界を明らかに
土地の売却にあたり、土地の測量が必要になる理由は、取引面積と境界を明らかにするためです。
底地の価格の算定にあたり、取引面積はその基礎資料であり土地の正確な面積が分からなければ、正確な底地の価格は出せません。又、取引する土地の境界線をはっきりさせないと境界線のトラブルが絶えなくなるので測量は欠かせません。
また、底地に私道が介在していたり、敷地上の建物や隣接地の建物の越境や土地の高低があればより一層、正確に測量することが必要になってきます。
底地トラブルの回避や解決には不動産鑑定評価書を活用しよう
底地は、借地権の付着した土地で、土地を借りてそこに住宅とか工場とかを建てて入居又は工場を操業等をしています。
したがって、地主が自分の土地を自由に使う場合に比べて借地権は借地借家法という法律で保護されており、何かとトラブルが生じる可能性があります。
底地を同族法人や第三者、借地人等に売却するにあたり、適正な価格を把握すると共に円滑な交渉を行うにあたり、不動産鑑定書はお役に立ちます。
例えば底地の価格が適正であることを説明するにあたり、不動産鑑定評価書をもって、その価格の根拠を説明する資料としてお役に立ちます。
なお、その書面に関与した不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準及び価格等調査ガイドラインに基づき成果物を作成し、鑑定評価を行った年月日、資格などを表示し、署名捺印することになっています。
底地に関する事ならアプレイザル総研へご相談ください
底地とは、借地権が付着した土地の所有権を言います。借地権とは、借地借家法第2条により建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権を言います。
底地の価格は、底地をどなたが取得するかによって異なってきます。底地を借地人が取得すれば、借地権が消滅しますので、借地権が設定された土地が更地(完全所有権)になります。土地の制約がなくなり、担保価値が上がり、土地の流動性が高まります。
また、底地を第三者が取得すれば、借地借家法の制約を受けなおかつ地代が低いため流動性が乏しく価格は低くならざるを得ません。
又、定期借地権等の設定された底地は、それぞれ借地期間等の違いにより底地価格はまちまちです。
このような背景を有する底地の価格はそれぞれまちまちです。適正な価格で売買をする等の場合は、適正な価格であることを検証するためにも、不動産鑑定士による鑑定評価書を取られることをお勧めします。
底地に関するご相談はアプレイザル総研へご相談ください。
株式会社アプレイザル総研
不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
不動産の鑑定・相続コンサルならお任せ下さい。皆様のお力になります
電話:0120-987-134 北浜駅より徒歩5分
著書:土地評価の実務 / 広大地評価の重要裁決事例集 / 広大地評価判定の実務