新型コロナウィルス

新型コロナウィルスによる不動産にまつわる法律相談集(2020年4月22日作成)を一部、掲載いたします。今まで起こったことのない未曾有の状況下で、皆様のご参考になれば幸いです。

ただし、状況の変化により、掲載した内容が古くなる場合がありますので、具体的な判断は、個別に弁護士の先生とご相談下さい。

なお、今回の掲載の著作権は、『弁護士法人あすなろ あすなろ法律事務所』様に帰属しております。

 

ビルのオーナーに家賃の支払い猶予を申し入れましたが、オーナーも銀行弁済をしなければならないとして、応じてもらえませんでした。資金の余裕のない現状では滞納せざるを得ませんが、賃貸借契約を解除されないでしょうか?

家賃猶予の法律がない、現状では、協議がまとまらないままでの滞納は、債務不履行となり解除の原因となります。

ただし、もともと家主が賃貸借契約を解除するためには、債務不履行によって家主と賃借人間の『信頼関係が破壊されること』が必要です。過去の裁判例では、それまで遅れずにきちんと支払っていた実績があれば、一時的事情による2か月程度の滞納では、解除できないとされる場合が多かったです。

それだけに今回のコロナウィルスの非常事態のもとの一部または全部の賃料の滞納が数か月続いたとしても、裁判所は解除を容易に認めないものと思います。

とはいえ、理屈の上では債務不履行には違いがないため、コロナウィルスが長期化するに対応して、滞納が継続してしまった場合にまで、解除が否定される保証はありません。

この1~2か月の緊急の滞納を生じてしまったことはやむを得ないとしても、その間に次の対策を立てておくべきです。

なお、家賃が支払えない場合において、黙って滞納するのではなく、事前に家主に事情を説明しておくことが『信頼関係の破壊』を防ぐ1つの事情になります。

賃貸借契約書

 

業績停滞が続く事が予想される中、いっその事、賃貸借契約を解約して敷金の返還を求めたいのです。ところが、賃貸借契約上、6か月前に告知しなければ、賃料を6か月分取られる規定になっています。非常事態ということで、即時解約して敷金も全額返還してもらうということは出来ないのでしょうか?

残念ながら即時解約に伴う賃料6か月分支払いの契約上の規定が、今回のコロナ問題で無効になるかというと、難しいでしょう。検討される即時解約は、あくまでもテナントの選択によるものだからです。

ただし、非常事態下ということで、例えば2か月分だけの支払いで応じてもらうなどの交渉を通じて、合意契約に持ち込む努力をしてはどうでしょうか?

 

業界団体を通じて、国から家賃の猶予・減免の要請がありました。それを受けてテナントからも申し入れがありました。銀行への返済もある中で余裕はないのですが、それでも減免に応じる必要がありますか。

現状ではあくまで国の『要請』に過ぎず、強制力はありません。応じるも応じないも貴社の経営判断です。

とはいえ、現実に三菱地所や大東建託などの大手が賃料の猶予を行い始めていますので、中小オーナーといえども、社会的には猶予・減免への圧力が強まると思います。

実際、飲食店を中心に、賃料の支払いが困難なテナントが次々と発生しています。協議に応じなくても、事実上、賃料の一部ないし全部の支払いの不履行に至るテナントが出てくることを想定した方がいいのではないかと思います。

かと言って、支払いを催告したうえで契約を解除してテナントを追い出そうとしても、社会情勢として次の借り手がすぐに見つかる状態にはありません。また、この経済状況下で無理に賃料全額を回収しようとすることが、テナントが事業の継続が困難になる事態を招き、(保証金や敷金の額によるものの)逆に賃料の大部分が回収不能になるというケースもあるかもしれません。

したがって、現状ではお互いに譲歩しあって猶予ないし減額に応じて、助け合いながら緊急時を乗り切ることが賢明なのではないでしょうか?

金融機関への弁済についてもコロナウィルスによる影響が原因で決められた通りに支払う事が出来なかった場合には、ただちに期限の利益の喪失などの不利益が発生することにはならない(そのような通達が金融庁から金融機関にたいしてなされています)ことも考慮い入れることができます。

しかも、所有者等が賃料の減免に応じた場合、所有者等の税金の猶予や所有者等の急激な収入源に対する税金の減免措置などが講じられることになっています。このような家主支援の諸制度を活用すること等の可能性も含めたうえで判断してください。

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著書:土地評価の実務 /  広大地評価の重要裁決事例集 / 広大地評価判定の実務

 

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