被相続人である所有者は、本件土地上に鉄筋コンクリート陸屋根6階建事務所共同住宅(以下本件建物という)が存するも、無償返還届出を本件土地の賃貸契約書と共に税務署に提出しました。しかし審判所は、本件土地の評価は、無償返還届出書が提出されているので、自用地の価額の80%が相当とする裁決事例  平成13年6月6日裁決(大阪)

所有者の主張

本件土地の存する地域は、借地権の取引慣行はあるが、権利金を支払う慣行がないので、無償返還届出書が提出されていても、相当地代通達8の適用はなく、本件土地の価額は自用地の価額から借地権相当額を控除して評価すべきと主張した。

 

審判所の判断

イ(イ)本件土地が所在する地域は、■■■の中心部である■■地区に隣接し、都市計画法上の商業地域内で容積率の高い地区にあって中高層の店舗及び事務所が連なる高度商業地域に位置していることから、借地権自体が高い経済的価値を有しており、当該地域において借地権が取引の対象になっていることは周知の事実である。

このような地域において、土地の所有者が第三者に建物を建築させる場合、①借地借家法により借地人が強い保護を受けること、②将来、地代の値上げができるという保証がないこと及び③上記のとおり借地権自体が取引の対象となっていることを考慮すれば、借地権の設定に際し貸主が高額な権利金を要求することは容易に推認できる。

国税不服審判所

したがって、本件土地が所在する地域は、借地権の設定に際し権利金を支払う慣行がある地域であると認定できる

(ロ)請求人は、借地権の設定に際し権利金を支払う取引慣行がある地域と借地権の取引慣行がある地域とは別個のものであり、本件土地が所在する地域では借地権の取引慣行はあるが、借地権の設定に際し権利金を支払う取引慣行はない旨主張する。

しかしながら、当審判所の判断は、上記(イ)のとおりであり、請求人は、本件土地が所在する地域は借地権の設定に際し権利金を支払う慣行がない旨の主張をするのみで、上記認定を揺るがせるような具体的な証拠もないことから、この点に関する請求人の主張は採用できない。

ロ そうすると、本件無償返還届出は、借地権の設定に際し権利金等を支払う取引慣行がある地域に所在する本件土地について、権利金の認定課税等を受けないために提出されたものであり、有効に提出されたものであると認められる。

そして、本件無償返還届出書が提出された後、本件契約書の合意内容を変更した事実も認められないこと及び■■■■■■の平成10年3月期の決算書の貸借対照表の資産の部に本件土地に係る借地権の記載がないことをも併せ考慮すると、本件相続開始時点における本件土地の価額について相当地代通達8を適用して評価したことは不合理とはいえない。

したがって、本件土地の価額を自用地としての価額の100分の80として申告した請求人の申告内容に誤りは認められず、■■■■■付の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分は適法である。

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