事案の概要
A(原告・控訴人・上告人)は、本件相続において本件土地は、C不動産に賃料年額672万円で貸しているので、その貸宅地としての価額を自用地としての価額5602万1950万円の20%として申告した。
それに対してB(被告・被控訴人・被上告人)は、本件土地の貸宅地としての価額は、(上記)自用地としての価額の80%とみるのが相当であるから、その差額を相続財産の価額に加算するべきとして更正処分した。 貸宅地の評価は、実務上自用地の評価額から借地権の評価額を控除して評価します。
借地権の評価額は自用地の評価額に借地権割合を乗じて求めます。本件の場合借地権割合は80%です。
第一審東京地裁(昭和54年6月25日)判決
借地権が設定されている土地について、その設定の際に権利金などの名目で一時金が支払われている場合には、土地所有者においてこれに相当する土地使用の対価を取得したものとして、その一時金の法的性質いかんにかかわりなく、地代の額がそれだけ低く定められているのが通常である。
この場合、借地人は、その土地使用の適正な対価としての相当地代を下回る地代を支払うことによって当該土地を独占的に利用することができるので、賃借期間中右相当地代と実際に支払う地代との差額に相当する経済的利益が借地人に帰属することとなる。
借地権の設定に際し権利金等を授受する慣行のある東京都のごとき大都市において、借地権それ自体が独立の取引対象とされ、借地権価額あるいは借地権割合なるものが形成されているのは、主として、借地人に帰属している右の経済的利益を評価したものであると解される。
したがって、このようなものとしての借地権価額は、実際に支払う地代の高低と密接な関係をもち、同一の借地であっても、地代の高いものは借地権価額が低く、地代の低いものは借地権価額が高いという関係に立つということができる。
このことを底地価額のほうからいえば、借地権の設定により土地所有者に留保されている底地の権利は経済的・実質的には主として地代収受権能にほかならないから、高額の地代が定められている土地ほど底地価額は高いものとして評価されることとなるのである。
そうすると、借地権の設定に際し権利金等を授受する慣行のある地域であるにもかかわらず、その授受がなく、このため地代の額が相当賃料によって定められ、近隣における地代と比較しても著しく高額であって、借地人に帰属すべき右の経済的利益を認めることができず、その反面、土地所有者がかかる高額の地代を収受することによって当該土地の資本的活用を十分の資本的活用を十分図ることができる場合(すなわち、地代の資本還元額が当該土地の自用地としての価額と等しくなるような場合)においては、借地権としての経済的価値はほとんど認識されず、当該土地の底地価額は自用地としての価額とほぼ同額に評価されるべき理である。
もっとも、借地権は、地代の高低にかかわりなく、法律上種々の保護の対象とされており、また、借地権の設定により、土地所有者としては契約条件に基づく土地の最有効利用の制約を受け、譲渡や抵当権の設定等も事実上制限されることとなるのであるから、借地人に帰属すべき前記の経済的利益の有無のほかに、かかる事情が付随的に賃貸地の評価になんらかの影響を及ぼすことを否定することはできないし、
更にまた、借地人に帰属すべき前記の経済的利益そのものも、必ずしも厳密な計算通りの割合によってそのまま借地権又は底地の価額に反映しているものでないことは事柄の性質上当然である。
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【運営者】不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
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著書:土地評価の実務 PART3(プログレス刊)
土地評価の実務 PART2(プログレス刊)