借地権とは
借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利を言います。借地権の目的は、建物の所有に限られるため青空駐車場や資材置き場などは借地権に該当しません。
借地権は、旧借地法に基づく借地権と新借地借家法に基づく借地権があって、借地権の内容はその借地契約内容によって千差万別です。
借地権の種類について
借地権の種類については下記のようになります。
借地権(旧借地法による)
普通借地権(借地借家法第3条)
一般定期借地権(借地借家法第22条)
事業用定期借地権等(借地借家法第23条)
建物譲渡特約付借地権(借地借家法第24条)
旧借地法による借地権
旧借地法に基づく借地権は現在もまだ数多く存在しています。旧借地法は、大正10年(1921年)に建物の所有を目的とした土地の契約等を定めた法律です。
旧借地法において、土地の契約期間等が定められていますが、更新が可能です。場合によっては、半永久的に借地ができる可能性があります。又、借地権の売買も可能です。
地主が更新を拒否するには正当事由が必要となります。
一般定期借地権
一般定期借地権とは、建物譲渡特約付借地権または事業用定期借地権以外の定期借地権をいいます。
一般定期借地権は、契約期間を50年以上と定める借地契約で、建物の建替えによる期間延長をしない、建物買取請求権を原則認めないと定め、契約期間満了後、地主は確実に土地を取り戻すことができる内容になっています。
この契約書は、公正証書等による書面によることとなっており、事業用以外の用途に用いられることから、マンションや老人ホームなど特定の人の居住用建物の借地として利用されています。
事業用定期借地権
事業用定期借地権とは、事業の用に供する建物の所有を目的とした定期借地権を言います。契約期間は、10年以上50年未満です。
10年以上30年未満の事業用借地権の場合は、以下の3つを定める必要があります。
②建替えによる期間延長
③建物買い取り請求権がないことを定める
この契約書は、期間満了により終了し、原則として土地を更地にして地主に返還することとなります。
又、30年以上50年未満の事業用借地権の場合は、上記の10年以上30年未満の事業用用借地権の契約と異なり、①契約の更新、②建替えによる期間延長、③建物買い取り請求権がないことを定めることは任意であり、当事者の話し合いに基づくことができます。
なお50年以上の契約を結ぶとなると、事業用であっても一般定期借地権を利用することになります。
又、この契約書は、公正証書による書面によることになります。公正証書によらない契約は無効となりますので、注意が必要です。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権とは、土地の利用目的の制限はありませんが、借地期間を30年以上と定めた借地契約で、借地契約期間が終了(満了)になった場合に、地主(貸主・借地権設定者)に借地上の建物を相当の対価で譲渡する旨定めた特約付の契約を言います。
地主が借地上の建物を買い取れば借地権は終了します。地主には正当事由は不要ですが、あまり利用されていないようです。
マンションや老人ホームなど特定の人の居住用建物の借地
マンションや老人ホームなどの特定の人の居住用建物の借地については一般定期借地権(建物譲渡特約付借地権または事業用定期借地権以外の定期借地権)を利用されています。
借地権の鑑定評価額
借地権の価格は、借地借家法(旧借地法を含む)に基づき、土地を使用収益することにより借地人に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものです。
借地権の鑑定評価額は、(A)借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域と(B)借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域によって求め方が異なります。
(A)借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域
借地権の鑑定評価額は借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連付けて得た価格を標準とし、借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び借地権割合により求めた価格を比較考量して決定します。
借地権の鑑定評価額は下記に掲げる事項を総合的に勘案するものとしています。
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約にあたって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価格
(B)借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域
借地権の鑑定評価額は、土地残余法による収益価格を標準とし、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元して得た価格及び当該借地権の存する土地に係る更地又は建付地としての価格から底地価格を控除して得た価格を比較考量して決定するものとする。
この場合においては前記(ア)から(キ)までに掲げる事項を総合的に勘案するものとします。
不動産鑑定士の活用方法
借地権は、借地権の取引成熟している地域か否かや、地代の額、継続年数、借地権の種類、建物の構造、建物の経過年数等により千差万別で借地権の価格も多種多様です。
又、借地権の存在と借地権価格の存在は、別物で、借地権は不動産鑑定でも非常に難しい領域にあります。
さらに路線価には借地権割合がありますが、路線価の借地権割合はあくまでもその地域の標準的な地代等を勘案した割合であって、借地権の時価を把握するには参考になりません。
したがって借地権の時価を把握し売買等をする場合には、不動産に対する高い専門性を有する不動産鑑定の活用することをお勧めします。
借地権売買の相場について
借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利を言いますが、借地権は旧借地法に基づく借地権や新借地借家法に基づく借地権があって、借地の内容はその借地契約内容によって千差万別です。
また、地代や建物の構造、立地条件等によっては借地権の価格もまちまちです。
さらに借地権を売買するには地主の承諾が必要です。このような背景があるため借地権価格の明確な相場というものはありませんが、相続税算定に用いる路線価図の借地権割合と自用地評価額に基づき借地権の評価額は計算できます。
しかしこの計算は相続税における評価額であって1つの目安で、取引の相場ではありません。又、借地権が存在するからと言って、借地権の価格が存在するかとは言えないので、その借地権の存在する地域を十分に調査する必要があります。
借地権売買で大切なポイントは6つ
ポイント1 借地権売却は、地主との関係性が大切
ポイント2 借地権は地主に先ず買い取り交渉をする
ポイント3 借地権の売却等には地主の承諾が必要
ポイント4 借地権と底地を共同(同時)売却が最高
ポイント5 地主から底地を買い取る
ポイント6 信頼できる不動産鑑定士に借地権の評価を依頼する
ポイント1 借地権売却は地主との関係性が大切
借地権は、建物の所有を目的に土地を借りる権利なので、地主との人間関係が良好か否かがとても重要になってきます。
何故ならば、地主との関係が悪いと借地人も借地権の購入者も地主に対して、地代や建物の増改築、用途変更等の交渉が難しくなってきます。したがって、借地権の売却は地主との関係性が大切だと言う事になります。
ポイント2 借地権は地主に先ず買い取り交渉をする
借地権は建物の所有を目的に土地を借りる権利であって、その土地を自由に処分したり、利用することは出来ません。利用制限のある土地のため、借地権のみの単独の売却は難しく価格も低くなる傾向があります。
しかし地主に借地権を買い取ってもらえば、その土地は自由に使用収益できる土地、更地になりますので、第三者に借地権を売却するよりも高く買い取ってもらえます。
したがって借地権の売却をする事になれば、先ずは地主と借地権の買い取り交渉をお勧めします。
ポイント3 借地権の売却等には地主の承諾が必要
借地権の売却、増改築、建替えの場合には、地主の承諾が必要です。
民法第612条1項では「借地人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」とあります。
なお、地主が借地権の譲渡を承諾せず、揉めた場合、裁判所の借地権譲渡の許可を求める事になり、借地権の承諾の折に「借地権の譲渡承諾料」の支払いが必要になります。
一般的には、借地権価格の10%が目安です。
ポイント4 借地権と底地を共同(同時)売却が最高
これは、借地権と底地を一括して第三者(法人又は個人・不動産業者)に売却する方法です。
即ち、底地と借地権付建物を一体として売却する場合、借地権者と底地(貸宅地)の双方の同意が必要です。この場合、土地売却に際し借地人は地主の売却に対する譲渡承諾料等の手数料も不要ですし、一括売却することによって借地権や底地(貸宅地)を単独で売却するよりも高く売却することが可能になります。
しかしながら、借地権を売却するにあたって底地(貸宅地)の所有者との売却価格の調整に時間がかかります。また、売却した土地の収益の配分について当事者間で話し合い等をする必要があります。
なお、物件を売却することになれば、売却価格や売却後の借地権と底地(貸宅地)の収益の配分について不動産鑑定士の作成した鑑定書により値交渉や収益の配分を行うことによって当事者間の揉める事が、少なくなるのでおすすめします。
ポイント5 地主から底地を買い取る
借地権は土地を利用する権利ですので、土地の利用に制限がありますが、借地権者が借地権の付着した土地即ち底地(貸宅地)を購入すれば借地していた土地は完全所有権となって土地を自由に使用できますし、土地の資産価値も上がり、担保価値も高くなり金融機関から融資も受けることも可能になります。
しかし借地権者が底地(貸宅地)を購入するにあたり価格の調整に時間がかかるというデメリットもあります。しかし、底地(貸宅地)の所有者である地主との売却価格の交渉をするにあたり、不動産鑑定士の作成した底地(貸宅地)の鑑定書を作って、鑑定書に基づく価格で地主との売却交渉をすれば揉め事も少なくなりますので、是非とも鑑定書を作ることをおすすめします。
ポイント6 信頼できる不動産鑑定士に借地権の評価を依頼する
借地権とは、建物の所有を目的に土地を借りる権利を言いますが、その内容はその借地契約によって、千差万別です。
また、地代や建物の構造、契約期間、物件の立地等によっても借地権の価格はまちまちです。
さらに借地権が存在するからと言って、借地権の価格が存在するかとは言い切れません。このような背景をもつ借地権を売却するにあたり、事前に借地権の価格を把握しておくことは重要です。借地権の価格を求めるにあたり、信頼できる不動産鑑定士に価格の評価の依頼をしましょう。
不動産鑑定士に依頼するメリット
借地権には旧借地法上の借地権、借地借家法に基づく普通借地権、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付き借地権があります。 不動産鑑定士に依頼するメリットは下記の通りです。
①借地権の相場はないが、売却価格の目途がたつこと
②買主との事前交渉で借地権価格の説明ができること
③買主に買い叩かれることがなくなること
④借地権の価格について書類(鑑定書)があるので足元を見られることがなくなること
⑤借地権を第三者に売却する場合、地主に売却する場合、それぞれ価格が異なるので、価格についての争いを避ける事ができること
借地権売買を検討するなら不動産鑑定のプロ、アプレイザル総研へ
借地権は、建物の所有を目的に土地を借りる権利ですが、借地権相当額は更地価格の6割とか7割相当になる場合があったり、借地権という権利は存在するが、借地権の価格がほぼつかないという場合も、たまにあります。
借地権売買を検討されるならば、借地権の仕事に手慣れている不動産鑑定のプロ、アプレイザル総研にお任せください。しっかりとした仕事を致します。
【運営者】不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
不動産の鑑定・相続コンサルならお任せ下さい。皆様のお力になります
電話:0120-987-134 北浜駅より徒歩5分
著書:土地評価の実務 part2(プログレス刊)
土地評価の実務 (プログレス刊)