1. 路線価、6府県とも下落、投資熱は下がらず旺盛!!
国税庁が7月1日発表した2021年分の路線価は、8年ぶりに近畿6府県すべてで標準宅地の平均値が前年を下回った。新型コロナウイルス感染拡大によってこの数年、関西経済をけん引してきたインバウンド(訪日外国人)を軸とする観光需要が消失し、地価下落が商業地から住宅地まで広がった。ただ、コロナ後を見据えたホテル、オフィス開発は依然として旺盛だ。
近畿6府県全体(標準宅地の平均値)が下落したのは6年ぶり。インバウンド需要の恩恵を受けてきた大阪・ミナミの下落率は全国で最も大きくなるなど、コロナ禍の影響が地価に表れた。府県別では、大阪が0.9%マイナスと8年ぶりの下落に転じたほか、京都も7年ぶりに下落となった。今回の路線価は、この数年の地価急騰の反動で下落幅が大きくなる地点が相次いだ。「阪急うめだ本店」前は1平方メートルあたり1976万円と、38年連続で近畿首位を守ったが、前年からは8.5%の下落となった。
兵庫県で下落率が大きくなった神戸市の商業スポット「三宮センター街」(9.7%下落)もコロナ前のにぎわいにはほど遠い。緊急事態宣言の期間が明けて人出はやや回復したが、神戸税務署の担当者は「三宮地区は飲食店や宿泊施設が多く、コロナの影響が直撃した」と話す。
奈良県は奈良近鉄ビル(奈良市)そばの奈良市東向中町(大宮通り)が12.5%下がった。奈良公園や寺社へ向かう観光の玄関口だが、コロナ禍でインバウンドと国内観光客が激減。あおりを受けて近鉄奈良駅前の東向商店街では老舗の土産物店が廃業した。大阪国税局は「テナント需要が大きく減退した」という。
コロナ禍が関西の地価上昇トレンドに冷や水を浴びせた格好だが、ホテル、オフィス、高級住宅などの開発投資の勢いは衰えていない。
「住友商事から心斎橋の商業施設を取得した」――。発表したのは独銀行大手デカバンクの子会社。同社は4月、住友商事が所有していた大阪・ミナミの戎橋付近の商業ビル「住友商事心斎橋ビル」(旧「クリサス心斎橋」)を買い取った。向かいの「戎橋ビル」前は21年の路線価で前年比26.4%マイナスと急落。だが、ミナミの中心地に位置する収益面の潜在力はコロナ後に生きるとの期待感は根強い。
コロナ後に活況が戻ることを期待した動きはホテル開発にも表れている。
星野リゾート(長野県軽井沢町)は22年4月開業をにらみJR新今宮駅前でホテルの建設を進める。新今宮駅は関西国際空港と直結しており、コロナ収束後のインバウンドの新たな拠点となると見込む。
オフィスの開発も進む。阪急阪神ホールディングスは22年春に「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」を開業する予定。阪神梅田本店に直結する好立地だ。すでにダイキン工業や東洋紡などが入居を決め、「オフィスの誘致は計画通り進んでいる」(阪急阪神不動産)という。
(日本経済新聞2021.7.2)
2. 土地・建物に官民共通ID、国土交通省 中古住宅の取引活性化!
国土交通省は全国の土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みをつくる。民間の売買データベースと国の登記簿などを照合しやすくする。事業者が消費者の求める情報を調べやすくなり、取引を円滑・透明にできる。人工知能(AI)による資産査定など新サービスの普及を促す。中古住宅市場を活性化できれば空き家対策にもつながる。
有識者らによる検討会を設け、2021年度中にデータ連携の指針をまとめる。22年度からの運用をめざす。
不動産取引で融資する銀行など金融機関にとっても、物件の担保価値を評価しやすくなると見込まれる。
不動産の分野では、流通物件の成約実績を蓄積する事業者用の検索システム「レインズ」がある。各事業者は管理物件の改修履歴など独自の詳しいデータも持つ。バラバラの情報をひもづけて消費者に提供するのに手間がかかる問題があった。
国交省は共通IDをつくり、データ連携を進める狙いだ。国の法務局が管理する不動産登記簿にある13ケタの番号の活用を想定する。業界各社には物件の新規登録やデータ更新の際にIDを反映するよう求める。対象となる土地・建物は全国2億件超に上るという。
導入には事業者ごとのシステム改修が必要になる見込みだ。登録項目などの詳細は検討会で議論する。データ連携が個人情報保護法に抵触しないようにルールを詰める。
消費者向けの住宅情報サイトでは、同じ物件の広告でも仲介業者が異なると重複して分かりにくいといった指摘が少なくない。共通IDを活用すれば同じ物件を整理して見やすくしたり、問い合わせをしなくても成約情報を即座に反映させたりできる。消費者がスマートフォンひとつで必要な情報にアクセスできるような新サービスの普及を後押しする。
住宅販売に占める中古の割合は米欧が7~8割なのに対し、日本は1割台にとどまる。今後の人口減少の加速をにらめば、空き家対策の観点からも良質な中古住宅が流通しやすい環境の整備が一段と重要になる。
(日本経済新聞2021.6.22)
3. 大阪都市計画局 府議会で可決 街づくり一元化 11月始動!!
大阪市の街づくりを大阪府・市が共同で担う「大阪都市計画局」が11月に始動する。5月に開会した府・市両議会が共同部局設置の規約案を議決。JR大阪駅北側の「うめきた2期」区域や夢洲(ゆめしま)地区に代表される大規模再開発事業において、府・市一体で都市計画の原案作成から決定までをする制度が整う。今後の事業の効率化が期待できそうだ。
大阪府議会は閉会日の9日、4月に施行された府・市の広域行政の一部を一元化する条例に基づき、新部局を設置する規約案を賛成多数で可決した。大阪都市計画局は、府の都市整備部と住宅まちづくり部から約100人、市の都市計画局から約30人の職員が集まり、計130人の体制となる。府知事の管轄のもと、拠点は府庁の咲洲庁舎(大阪市住之江区)に置かれる。
カジノを含む統合型リゾート(IR)を担当するIR推進局や、府内の港を一括管理する大阪港湾局など、これまでも府と市は共同部署を設置してきた。現在、府と市は吉村洋文知事と松井一郎市長の緊密な連携のもとで、市内の都市開発にも府が関わっている。松井氏は「市長と知事が仲悪くなっても、大阪の成長のための事業は一体で進む」と、規約案成立の意義を説明する。
新部局が担う大きな役割の一つが、容積率の緩和などを定める「都市再生特別地区」や鉄道・高速道路整備など、市から府に事務委託される7分野の都市計画権限だ。
政令市である大阪市は都市計画では府と同等の権限を持つ。これまで「淀川左岸線延伸部」のような高速道路整備などは市主導で決めてきた。ただ、府と市の足並みがそろわないケースもあり、投資が分散して行政の無駄が生じてきたとの指摘もある。今後はこうした事業を府・市一体で進める体制となる。
新大阪駅前地区、夢洲・咲洲(さきしま)地区など、市が抱える中心地の都市開発の企画や事業推進も新部局が担当する。これまでは府の住宅まちづくり部と市の都市計画局にそれぞれ担当者が配置されていたが、同じ部局に集まることで協議や調整がしやくすなる。民間事業者向けのワンストップ窓口も設ける計画だ。
今後、新部局が本格的に進める事業として想定されるものの一つが大阪城東部地区の開発だ。大阪府立大と大阪市立大が統合してできる新大学「大阪公立大学」が25年度に開設を予定している新キャンパスが中心となり、多様な人材を集めて国際色のあるまちづくりを目指している。
(日本経済新聞2021.6.10)
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不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
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著書:土地評価の実務 / 広大地評価の重要裁決事例集 / 広大地評価判定の実務