企業の不動産投資活発

1.企業の不動産投資活発  昨年度売買額コロナ前水準!!

企業の不動産投資が変わってきた。新型コロナウイルス直後は売却で財務改善を進める動きが目立ったが、足元では不動産の有効活用で安定収益を得ようとする企業が増加。JR東日本など老朽設備を商業施設などに転用する動きも広がる。法人による不動産売買額は2021年度に前年度比で約2割増え、コロナ禍前の水準に迫った。約500兆円とされる日本企業の保有不動産の流動化が広がる可能性もある。

不動産投資事例

みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所が、主に法人間の不動産売買額を集計したところ、21年度は4兆3707億円だった。コロナ禍前の19年度と比べ98%まで回復した。主要な取引主体である不動産会社や不動産投資信託(REIT)に加え、一般企業による不動産取引が活発だった。

一方、21年秋以降は企業の不動産投資に対する意識が変わりつつある。「コロナの収束を見据えた次の一手として、攻めの投資が増えた」(不動産コンサル幹部)。不動産サービス大手CBREの22年1~3月の不動産取引金額は約1500億円と前年同期から倍増した。約半分が企業による案件が占め、収益源の多角化や魅力ある施設に替える動きが目立つ。

企業は不動産事業で安定収益の確保を急ぐ。三井不動産の三木孝行専務執行役員は「保有する土地や施設を物流施設や住宅、商業施設へと開発したい企業からの相談は増えている」と話す。

企業にとって不動産投資が収益につながれば「事業拡大のほか自己資本利益率(ROE)の改善効果が期待される」(国内証券アナリスト)。(日本経済新聞2022.5.29)

 

2.大和ハウス住宅展示場3割削減デジタル営業に移行!!

大和ハウス工業は全国にある住宅展示場を5年で3割減らす。新型コロナウイルス禍で来場者数が減少しているうえ、展示場を契機とした注文住宅の契約率が低下していることに対応する。今後、デジタル技術を活用した住宅販売へ段階的に移行する。人口減少で国内の注文住宅市場は20年で25%縮小した。展示場を大きく減らす取り組みは住宅各社の営業手法に影響を与える可能性もある。同社は注文住宅では業界3位で、2022年3月末時点で全国に197カ所の展示場を展開する。新型コロナ禍で21年度の来場者数はコロナ禍前の19年度比5割減と大きく減少した。来場をきっかけに契約した割合も従来は5割程度あったが、21年度は3割にまで低下したデジタル営業

展示場は1カ所あたり、年間の維持費用が3000万~5000万円かかる。展示場での営業効率が落ちていると判断し26年度までにまず50カ所ほど閉鎖する方針だ。主に人口減少が進む地方の不採算の展示場が対象となり、最大で100カ所になる可能性もあるという。展示場の削減により、資材価格の高騰で上昇する住宅建設コストに対応する狙いもある。

展示場の代わりにデジタルを駆使した営業に力を入れる。今年4月に始めた仮想空間でアバター(分身)を動かしながら住宅を見学できるサービスなどを拡充する。

大和ハウスの21年度の、注文住宅の販売戸数は約5000戸。このうち最大1割がインターネットを起点として販売に至った住宅だというウェブサイトを通じた営業を強化するなどで、26年度までに1200戸と全体の約2割に高める考えだ。(日本経済新聞2022.6.11.)

 

3.大成建設が私募REIT不動産で収益拡大10年後1000億円!!

大成建設は非上場の不動産投資信託(REIT)に参入する。来春の組成に向け資産運用会社を設立し、10年後をメドに1000億円の運用規模をめざす。清水建設や西松建設も組成準備を進める。開発不動産をREITへ売却して資金を早期に回収し、次の案件に振り向ける。総資産を膨らませずに効率よく不動産開発を進めて収益基盤を拡大するゼネコンで私募リート

大成建設は5月、資産運用会社「大成不動産投資顧問」を設立した。自社が6割、グループの大成有楽不動産などが4割出資した。2023年春に私募REITを組成し、150億円規模の不動産運用を始める。みずほ証券を財務アドバイザーとする。地銀、生損保、年金基金などから出資を受けるほか、自社グループも出資する。金融機関から融資も受ける。

5月時点で保有する3000億~4000億円相当の不動産の一部をREITに組み込み、3~4年後に500億円、10年後に1000億円の運用規模を目指す。また首都圏でオフィスビルや中型マンション、物流倉庫など安定収益を見込みやすい物件を軸に開発してREITに売却する。テナントが入った状態で長期間保有し、4%前後の運用益をめざす他社でも私募REITの運用が広がる。

清水建設は21年8月に資産運用会社を設立し、23年初頭の運用開始をめざす。自社で開発したオフィスや物流施設をREITに売却し、施設運営は子会社で手がける。清水建設は21年8月に資産運用会社を設立し、23年初頭の運用開始をめざす。自社で開発したオフィスや物流施設をREITに売却し、施設運営は子会社で手がける。5年以内に1000億円をめざし、まず300億円規模で運用を開始する。

私募リート年々増加ゼネコンは建設事業の収益が景況感に左右されることから安定収益が見込める不動産開発事業の拡大を進める。開発物件を長期保有することで自社計画の投資枠を超えてしまう恐れもある。物件を私募REIT売却することで投資枠を効率的に回転させたい考えだ。

自前で不動産を抱えることで資産効率が低下する懸念もあった。西松建設は21年当時に筆頭株主だったアクティビスト(物言う株主)から、保有不動産の資産効率向上を求められた。その後、21年5月発表の中計でアセットマネジメント事業の強化・拡充を掲げて私募REITに参入した。

不動産証券化協会によると、22年3月時点で国内の私募REITの運用資産総額は前年同月比13%増の4兆7250億円。特定の投資家との相対でやり取りするため、手続きが比較的簡易で済む。一般に公募REITよりも利回りが高く、運用難に悩む投資家の需要を取り込んでいる。
(日本経済新聞2022.5.18)

 

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著書:土地評価の実務 /  広大地評価の重要裁決事例集 / 広大地評価判定の実務

 

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