【築33年で入居者が減少傾向にあり、修繕費用が1000万円以上かかることが見込まれるマンションについて立退料の支払い300万円と引換えに正当事由を具備するとされた事例】
東京地判平20・10・20(平19(ワ)9776・平19(ワ)27350)
本件賃貸建物は、築33年のマンションの一室であり、平成15年以降、入居者が減り続け、平成17年の時点で11戸中入居者は4戸のみであった。
当該マンションについては躯体自体に問題はないが、今後、新規の入居者を獲得するためには合計1000万円以上の多額の修繕費用がかかることが見込まれるため、当該マンション取壊しの必要性が認められるとした。
他方、Yは単身で歩行に障害があり、収入も少ない状況で居住を継続する必要性は認められるが、その不利益は金銭によって補償することが可能であるので、相当額の立退料の提供により正当事由が具備されるとした。
立退料の金額については、立退料があくまで正当事由の補完要素であること指摘した上で、借家権価格536万7962円に対して、300万円が相当としている。
なお、本件では更新拒絶の申入れ時点においては立退料の申し出がなかったため、更新拒絶の時点で正当事由の具備はなかったとの主張がなされたが、事実審の口頭弁論終結時までになされた立退料の提供を考慮できるとした平成6年10月25日等の最高裁判例(最半平3・3・22判時1397・3、最判平6・10・25民集48・7・1303)を引用し、その主張は認められなかった。
出典:新日本法規出版の書籍より引用
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不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
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