不動産鑑定士による時価評価によるべきとした裁決事例
相続税法22条は、相続財産の価額は、特別に定める場合を除き、当該財産の取得時の時価によると規定していますが、本件裁決は、特別に定める場合に該当するか否か争いになった貴重な裁決事例です。
相続税法上の時価について要点を東裁(諸) 平9第86号 平成9年12月11日裁決(非公開)より引用しました。
財産評価基本通達に定められた評価方法により算定される価額が時価を上回る場合、同通達の定めにより難い特別な事情があると認められることから、他の合理的な評価方法により評価する事が許されるとした事例です。
借地権付分譲マンションの底地の評価は路線価評価によらず、不動産鑑定士による時価評価によるべきとした裁決事例
【事例の概要等】
(1)本件土地の概要
(イ)本件宅地には賃借権が設定され、その存続期間は昭和52年2月1日から60年である。
(ロ)本件宅地の上には、鉄骨鉄筋コンクリート造陸屋根、地下1階付10階建の借地権付分譲マンションが昭和52年に建築され、本件相続開始日の現在84名により区分所有されている。
借地権付分譲マンションの底地の評価において、路線価に基づき評価せず、特別の事情があるとして不動産鑑定評価書による評価を採用した裁決事例です。
(2)事例の概要
相続人は不動産鑑定士による不動産鑑定書に基づく評価200,000,000円をもって時価と判断し申告しましたが、原処分庁は路線価に基づく時価724,944,665円をもって時価であると判断し、争いになりました。
その結果、本件の場合、審判所は「借地権付の分譲マンションの敷地であることから多数の借地権者が存在しており、かつ、当該借地権は建物の区分所有権とともに独立した市場を有していると認められることからみて、本件宅地と当該借地権とが併合し、完全な土地所有権となる可能性は著しく低いものと認められること及び契約条件からすれば、将来において名義書換料等の一時金の取得が期待できないものと認められるところ、これらの特別の事情は底地が、地代徴収権に加えて将来借地権を併合して完全所有権となる潜在的価値に着目して価格形成されると認め難い場合に該当するとみることができるから、本件宅地については、その価額を借地権価額控除方式のみによって評価することは相当でないと認められる。」という理由により審判所の依頼した不動産鑑定士の評価した鑑定評価額60,000,000円が妥当な価額であると判断しました。
建築基準法上の道路でないために相続税法上の評価額が下がった弊社事例
対象不動産の概要
所在地:◯◯市◯◯
面積:600㎡
利用状況:駐車場
街路・接面:東側幅員4m通路(註1)に等高に接面。間口約18.9m。奥行約31m。
行政的条件:用途地域第2種中高層住居専用地域
建ぺい率・容積率:60%.200%
その他:高度地区(第1種)
交通条件:駅から1600m
画地の形状:ほぼ長方形、平坦
争点
ポイント
- 路線価が付設されていないので、特定路線価を申し出たところ、60,000円/㎡という回答が出ました。
- 前面道路は4m舗装の通路ですが、建築基準法上の道路には該当しないことが調査の結果分かりました。即ち、建物の建築ができません。
- 建物の建たない土地が、60,000円の特定路線価というのは時価と言えるのか?
解説
①対象地の前面道路は4mの幅員の通路ですが、建築基準法第43条第1項ただし書きであることが分かりました。
(Aは現況幅員2m前後、Bは現況4m)
ⅰ)通路の幅員を全て4mに確保すること→A+Bが4m確保
ⅱ)通路管理者(◯◯県)の承諾を得ること
ⅲ)更地面積は500㎡以下であること
ⅳ)通路は2m以上接すること
※建築基準法第43条第1項但し書の通路は特定行政庁が交通上、安全上、防災上及び衛生上支障のないと築審査会の同意を得て許可した場合は本件土地上に建物を建てられることによりますが厳しい条件がつくことになります。
②本件土地上の建物の建築可能条件は上記の条件が必要なことが分かり、1㎡当り30,100円総額27,241,000円と鑑定評価した結果、特定路線価60,000円は30,100円となりました。
鑑定をすることによってほぼ半額となりました。
③特定路線価を鵜呑みにしてしまえば、上記のような良い結果は出て来なかったと思います。本件土地の前面道路が建築基準法上の道路か否か、建物が建つのか否かを市役所調査で確認し、鑑定したことが良い結果につながったと思われます。
株式会社アプレイザル総研
不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
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電話:0120-987-134 北浜駅より徒歩5分
著書:土地評価の実務 / 広大地評価の重要裁決事例集 / 広大地評価判定の実務