親族間・個人間の不動産売買とは
親族とは、民法では「配偶者、六親等内の血族、三親等内の姻族」を言います。ここでは親族間の不動産売買とは、例えば親から子へ不動産を売却するとか祖父母から孫への不動産売却が該当します。
又、同族とは、同じ血筋、部族、系統に属することをいいます。同族間不動産売買とは、例えば、会社の代表個人所有の不動産を自社へ売却する場合や親会社から子会社へ不動産を売却する場合です。
親族や同族は、血縁関係や資本関係の繋がりがあるため、第三者との不動産売買とは異なり、不動産の取引価格を当事者の都合に合わせて自由に、時価より低く価格を決める事が出来るため、税務署等は不動産の価格に睨みをきかせているので注意が必要です。
◆親族間・同族間不動産売買では価格が適正かどうかが最も重要!!
親族間・同族間の不動産売買では恣意的に、より一層低く不動産の価格を取引することも可能な環境にあります。
その状況を知ってか、税務署は、親族間・同族間の不動産売買があれば、それに注目し、課税のチャンスを狙っています。したがって、親族間・同族間の不動産売買は注意が必要です。
ところで土地の時価とは、実際に売買された土地の価格、又は、売り買いした場合の相場の値段を言います。土地の場合、実勢価格が時価と言ってもいいかもしれません。
親族間・同族間の中でも法人が絡む場合には、不動産の売買等は税法では全て時価を基本として課税関係が出来上がっています。
したがって親族間・同族間の不動産売買においては、取引価格が適正か否かがいつも問われて、又、注視されているのです。
別の言い方をすれば税務署は、親族間・同族間の不動産売買があれば、課税のチャンスを狙っているので注意が必要です。
税務署から課税される恐れがあるかもしれない(低額譲渡について)
自由に不動産の売買価額を決められるからと言って、恣意的に不動産の売買価額を著しく低くして取引をすると、税務上問題となります。
不動産の時価とは、不動産の譲渡があった場合において、その不動産について不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に、通常成立すると認められる価額、即ち当該不動産の客観的交換価値を示す価額をいうものと解されます。
相続税評価額や固定資産税評価額も時価の1つですが、不動産の取引においてはこれらの価額を時価として売買金額を設定しますと税務上問題となることがありますので注意が必要です。
親族間・同族間の不動産売買は、自由な価格設定が可能なので、税務署も課税のチャンスを狙っています。課税リスクを回避する努力を怠らず、不動産の取引価格を十分に調査して、不動産の売買をすることをお勧めします。
◆親族間・同族間の不動産売買における時価の算定方法
親子や配偶者等の親族間や同族会社と会社の代表者間等において不動産の売買を行う場合には不動産の時価を把握したうえで取引を行うことが重要です。
時価とは端的に言えば、売り買いした場合の相場の値段とも言えます。例えば、土地の時価については、一般的に以下の価格があげられます。
相続税評価額(路線価等)・・・80
固定資産税評価額・・・70
取引事例の価格・・・100以上(一般的に)
相場(実勢価格)・・・100以上
鑑定評価額・・・時価(100以上)
一つの方便として、相続税評価額(80)を0.8及び固定資産評価額を0.7で割った数字はおおよその時価(?)を示す場合があります。1つの目安として利用できます。
ただし、取引する土地が周囲の土地に比べて大きかったり、敷地内に数メートルの段差があって一体利用が難しい場合は、不動産業者か不動産鑑定士の意見を聞かれる事をお勧めします。
相続税路線価(相続税評価額)
土地の時価を調べる方法の1つとして相続税路線価(相続税評価額)があります。
相続税路線価は国税庁が毎年1月1日時点の価格を毎年7月1日頃に発表しています。相続税路線価は公示価格の80%程度の価格水準を目安として設定されています。
相続税路線価で求められる相続税評価額は、相続税や贈与税の算出根拠となります。路線価はHPで「路線価」と検索すれば出てきます。又は全国地価マップでも検索できます。
相続税路線価は、主要都市の道路に設定されていますが、路線価がない地域では、倍率方式を採用しています。倍率方式は、各市町村長が定めている固定資産税評価額に倍率を乗じて評価額を算定します。国税庁のHPの評価倍率表に基づき求める市町村町を検索して倍率を選定して下さい。
相続税路線価(路線価)は、公示価格の80%程度なので、0.8で割り戻せば、公示価格水準になります。
固定資産評価額
土地の時価を調べる方法の1つとして固定資産評価額があります。
固定資産評価額は、市町村(東京23区は東京都)が基準年(3年ごと)の1月1日時点の価格を基準年の4月頃、発表しています。
固定資産評価額は公示価格の70%程度の価格水準を目安として設定されています。
固定資産評価額は、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算出根拠となります。
土地の所有者には、毎年。市町村から送られてくる固定資産税納税通知書に固定資産税評価額が記載されています。
又、土地を取得を予定されている方には、固定資産税評価額が分からないですが、固定資産税路線価を活用して固定資産税評価額を推測することが可能です。
固定資産評価額は、固定資産税路線価に土地面積を乗じて求める事が可能です。固定資産税路線価は、全国地価マップで検索できます。
固定資産税路線価は、公示価格の70%程度なので、0.7で割り戻せば公示価格水準になります。
不動産鑑定評価書
不動産鑑定評価書とは、不動産の鑑定評価に関する法律第39条に基づいて、不動産鑑定士が不動産鑑定を行った内容を不動産鑑定業者が依頼者に対して交付する書類を言います。
不動産鑑定書には不動産の鑑定評価額や対象不動産の表示、依頼目的や条件、評価額を決定した理由などを記載し、その鑑定評価に関与した不動産鑑定士が署名・押印を行います。
※不動産鑑定の依頼目的を例示すれば、次の通りです。
遺産分割のための鑑定評価
離婚による財産分与の鑑定評価
担保不動産の鑑定評価
地代・家賃の鑑定評価
相続税の還付等のための鑑定評価
遺留分を取り戻すための鑑定評価
底地を同族・親族、同族会社等に売却する場合の鑑定評価
固定資産税(不動産)の交換のための鑑定評価
成年後見制度による不動産の売却のための不動産鑑定
現物出資のための鑑定評価
弊社の鑑定評価書の構成は、下記の通りです。
対象不動産の表示
鑑定評価の基本的事項
価格の種類
不動産の類型
価格時点
鑑定評価を行った年月日
鑑定評価条件
鑑定評価の依頼目的等
鑑定評価額決定の理由の要旨
(1)一般的要因の分析
(2)対象不動産に係る市場の特性
(3)地域分析
(4)対象不動産の個別的要因及び最有効使用の判定(個別分析)
(5)本件評価の基本的な考え方及び評価の手順
(6)鑑定評価方式の適用
(ⅰ)原価法
(ⅱ)取引事例比較法
(ⅲ)収益還元法
(7)試算価格の調整及び鑑定評価額の決定
資料1・・・取引事例比較法
資料2・・・収益価格試算表等
資料3・・・対象不動産の写真等
◆不動産鑑定評価書のメリット・デメリット
不動産鑑定評価書は、不動産鑑定士等が行った不動産の鑑定評価の成果を記載した文書です。
・適正な時価を知ることができる。
世間では土地の価格は一物五価と言われるぐらい色々な価格がありますが、不動産鑑定をすれば適正な時価が分かります。
・精緻な時価を知ることができる
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価に関する法律において認められた国家資格者で、その不動産鑑定士が作成する鑑定評価書は不動産鑑定評価基準等に則って適正に作成されたものであり、信ぴょう性が高く、公的にも採用されています。
・価格・地代・家賃等の訴訟等の不動産トラブルに対する時価等の証明に役立つ
不動産は個別性が強く他の動産に比べて時価を把握するのが難しいですが、不動産鑑定を依頼すれば、時価等を適正に把握し、文書化して不動産鑑定評価書を発行して貰え、時価等の立証に役立ちます。
・遺産分割や離婚による財産分与の折に役立つ
不動産は一物五価と言われるほどに、その価格はまちまちで争いの元になりがちです。遺産分割や離婚による財産分与において適正な時価を把握することによって、財産を分配することが可能となります。
・相続税の還付請求に役立つ
相続税還付をする場合、相続人は相続税評価基本通達に基づく価格ではなく、不動産鑑定評価書による価額が相続開始日における適正な時価であることを主張したい場合、その旨を国税当局に説明する必要があります。その折に不動産鑑定書評価書が役立ちます。
・費用が発生
不動産鑑定評価書を依頼するとなると、不動産鑑定評価基準等に準拠した書類を発行することになりますので、1件当り20万円以上はします。しかし不動産の適正な時価を把握することによるメリットを勘案した場合、多少の出費が必要かと思います。
一般的に弊社の不動産鑑定評価書は文書及び添付資料合計で40枚~70枚程度の書類の発行となります。
・不動産鑑定士によって価格は一律ではない
同じ不動産を複数の不動産鑑定士により評価すると各々価格はまちまちで、一律ではありません。
何故なら不動産鑑定評価書は不動産鑑定士の意見であり、判断だからです。
個人間・同族間の不動産売買を検討なら、アプレイザル総研へご相談ください
親族・個人間(親子間等)や同族間(社長所有のものを自社へ又は親会社から子会社等)で、不動産を売買する時は、その取引価格が著しく低い価格に該当するか否か等の見極めを事前にすることが大切です。
個人間・同族間の不動産売買は、不動産の価格を自由に決めて取引できる立場にあるので、税務署や会社の役員会等に不動産の価格について説明できる書類を準備しておくことをお勧めします。
【運営者】不動産鑑定士・宅地建物取引士 小林穂積
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著書:土地評価の実務 part2(プログレス刊)
土地評価の実務 (プログレス刊)